ぼやき

  • 「掃除の目的は汚れを除去することである。掃除機や雑巾の使い方を100回教えても、汚れとは何かを教えなければ目的は達成しない!」とまるで鬼軍曹のように職員を叱咤する。ムーンワーカーズの日課になっている朝の掃除であるが、いつの間にか形骸化していたからだ。手段が目的化することで肝心の中身を見落としてしまうことを「お役所仕事」という。
  • 「職員が洗ってはいかん!」とまるで小姑のようにぼやいたりもする。利用者が作業で使った軍手やエプロンを職員が洗濯したのでは訓練にならないからだ。もっとも日頃から「自分が汚したものは自分で綺麗にしなさい。」と職員は利用者を指導しているが、店がオープンしてから私は言い方を変えた。「人(お客さん)が汚したものを洗ったり掃除するのが君らの仕事だ!」
  • 「利用者みんなで同じ作業をさせるな!」としばしば言う。利用者によってその能力や特性がバラバラだからだ。それが障害者というものだ。「ひとりだけ違う作業だと仲間はずれになるから。」と反論もある。「なら、一人ひとり違う作業をさせればいい。」と返すと「それでは職員が足りません。」といつもの口論が始まる。昨今、個別指導の重要性が高まってきた。どこかの養護学校や職業訓練校のように集団指導を続けるから落ちこぼれが生まれる。そんな施設や学校は、そのうち時代から落ちこぼれてなくなるだろうが。
  • 「やってみせ、言って聞かせて、やらせてみせて、褒めてやらねば人は動かじ」という格言があるが、その全てをやっても思い通り動かない(動けない)のが障害者である。そんな時気の短い私は「早めに見切りつけて別の所に・・・」と言うや否や「何てこと言うんですか!この子は時間がかかるんです!」とやり込められてしまうも、あえてそれ以上の反論はしない。

これがムーンワーカーズ作業所の特性なのでしょう。

 (Sakai)

アインシュタインはアスペルガー症候群だった?

▽ 20世紀最大の天才といわれた物理学者アインシュタインは135年前の3月14日に生まれた。既存物理学の絶対的理論であったニュートン力学を180°ひっくり返す相対性理論を打ち立てたことはあまりにも有名だが、幼少の頃は言語に障害があったせいで周囲とのコミュニケーションがほとんど図れなかったという。また、文字記号認識障害のため、生涯、“R”を鏡文字で書いたともいわれている。その一方で、小学生の年齢でユークリッド幾何学や微分・積分を独学で習得するという驚異の数学的才能を発揮した。

▽ それらの事象から「アインシュタインはアスペルガー症候群だった。」といわれているが、私はそうは思わない。確かに興味ある分野のみ熱中する傾向はあったと思われるも、人並みに仕事に就き悩み挫折し、結婚し子供をもうけ、ヴァイオリンを習いモーツアルトの音楽を愛した。ただ、人より少し右脳左脳を多く使い、人とは少しずれた思考回路を持っていただけだ。そう思わないと、世にいう天才はすべてアスペルガーとなってしまうし、何より我々凡人は夢も希望もなくなってしまうからだ。

▽ そんな天才物理学者が残した名言の中で特に心魅かれるのは、「人が恋に落ちてしまうのは重力のせいではない。」 ウィットに富んだ人間アインシュタインならではの一言である。そして、20世紀もう一人の天才、喜劇王チャップリンは本人を前にこう語った。「私の人気は、誰もが私を理解できるからです。ところがアインシュタインさん、あなたの人気は、誰もがあなたを理解できないからです。」        (Sakai)

  image033       

人生、守りに入ったらおしまいだ!

▽ 家族、財産、地位、会社、顧客・・・。人生の折り返し地点を過ぎた頃から守るものが増えてくる。社会生活の中で得てきたもの、それはそれで一生懸命守らなければならない。

▽ しかし、人生そのものを守りに入ることは、社会人としていかがなものか。「リスクを背負うことなく、日々、決められたことだけを無難にこなす人。常に安定を求めて体制派の傘の下にいる人。日和見主義というか世渡り上手というか、それ自体が悪いわけではないが、一言でいえば平凡でつまらない人生である。ストレスはないけれど達成感もない寂しい人生である。保身ゆえに小さな責任も回避したがるずるい人生である」と粋がるのは簡単だ。

▽ だが、そう思う自分自身が保身に陥ってはいないかと時々不安になる。「福祉を隠れ蓑に、綺麗ごとだけ並べて臭いものに蓋をするような卑怯なことをしていないだろうか」と。

▽一方で、老いてなお人生を戦い続けている人がいる。「人生、守りに入ったらおしまいだ」といいつつ、会社と、役所と、そして世の中と必死に戦っている人たち。なぜそこまで戦うか。それは従業員の生活を、障害者の自立を、世界の平和を守るためだという。

▽人生を守る人と戦う人の根本的な違いは、自分を守るか、他人を守るかである。他人の人生を守るために戦う姿は美しく、福祉に関わるものにとっての模範となる。ただし、戦う相手は自分より弱者であってはならいということを肝に銘じつつ、これからの人生を歩みたい。

さて、お役人とすったもんだした末に、いよいよ「カフェムーン」を開業することになった。一人でも多くの利用者の自立につなげ、その人生を守るため日夜がんばろうと思う。 (Sakai)

image027

障害者御用達 「月夜の店」

▽ 一昨年に障害者虐待防止法が施行され、権利擁護とセットにして障害者の心身を守ろうとする声が高まってきた。喜ばしいことである。だが、その反面で見過ごされているのが障害者の犯罪ではないだろうか。軽微な例では「窃盗」や「暴行」、すこし進んだ例では「援助交際」で女が稼いだ金を男が「カツアゲ」、さらに女は身篭った子どもをトイレに産み捨てるという「殺人」すれすれの事件だ。これらはいずれも身近で起きているが、障害福祉の経験浅い私などは氷山の一角を見たに過ぎないのであろう。

▽ 近年の矯正統計年表によれば、新規受刑者の30%近くはIQ69以下の知的障害者によって占められている。さらに自閉症や精神障害等も含むグレーゾーンに範囲を拡げると、IQ79以下の障害者が占める割合は実に50%にもなるという。では、犯罪に至った理由とは何だったのか。最多の約4割を占めたのが「貧困・生活苦」であった。

▽ そこから見えてくる我々にできることとは、犯罪のbefore、afterを問わず彼らを経済的に自立させること、即ち就労支援ではないか。とりわけ、前述した援助交際の事例を勘案すると、支援中に性欲を暴走させないような工夫が必要だ。先人の話によると、その事業所では月に2回、ヘルスやソープランドへ連れて行く利用者がいるという。障害者だからといって性欲が減るわけではない、むしろ本能の制御が難しい障害者だからこそそういった支援が必要なのである。だからといって、いきなりヘルスなどの風俗を営業することは、周囲の目が許さない。

▽ そこで、まずは街角にたむろする夜行性障害者たちを引き付けておく場所を創る。彼女らが従業員として働くことができ、同時に彼らが客として利用できる「障害者御用達の月夜の店」。さしあたり、それをキャバクラと呼ぶならそれでよし。男女入替わってホストクラブもいい。風俗が福祉と融合する日は、そう遠くないと信じている。

▽ 周囲にはあえて説明をしてこなかった社名「ムーンワーカー」であるが、2014年、今まさに「月乃仕事人」として障害者の夜を支援しようとしている。                               (Sakai)

“Imagine”

▽12月8日はジョンレノンの命日。“Imagine there’s no Heaven(想像しなさい、天国なんて無いんだと)♪ で始まる名曲 “Imagine” には彼の思想が凝縮している。続く歌詞中にNothing to kill or die for(殺す理由や死ぬ理由も無い)やNo need for greed or hunger(物欲や飢える必要も無い)と反戦を色濃く出していることから、映画「キリングフィールド」のエンディングテーマに使われたことを記憶している方も多いだろう。また、No countries(国家も無い)やNo possessions(所有も無い)と唄う反保守的な表現から共産主義者と疑われ、FBIに目をつけられていた話は有名だ。さらには、No religion(宗教も無い)のフレーズが示すように “キリスト教は消滅する”と実際に発言してローマ教皇の反感をかったこともあった。

▽これだけ”No”を連発する歌詞にもかかわらず、世界中の大多数に支持されたのはなぜだろうか。それは、この唄には否定をまるごと包み込む大きな想いがあるからだと思う。

Imagine all the people (想像しなさい、みんなが)
Sharing all the world (世界を分かち合うって)
You may say I’m a dreamer (僕のことを夢追人だと言うかも知れない)
But I’m not the only one (だけど僕はたった一人じゃない)
I hope someday you’ll join us (いつか君も僕たちに加わって)
And the world will live as one (そして世界はきっと一つになる)

▽そこには、イデオロギーも偏屈なアナーキズムもない。ただ平和を愛する一個人の想いがあるだけだ。それを哲学や宗教と仰ぐ人がいても何ら不思議はない。それはレノン教?ある意味バイブルと言えなくもない。

▽もしも天国のジョンレノンが今の日本を見下ろしたならば “特定秘密保護法? 防空識別圏? 小さいよ、全くバカバカしい” そんなふうにつぶやくに違いない。どこの国も縄張り意識において大差はない。そして、国家(政府)は国民を縛りつけようとする。国民はそんな国家の勝手に愛想を尽かす。Peopleは、人を愛せても国を愛せなくなっているのだ。

▽ちなみに「君が代」には何の興味も愛着もない私だけに、“Imagine”が国歌ならぬ人類歌として唄われる日を待ち望んでいる。

image026

 (Sakai)

重いコンダラ

昭和の大横綱大鵬が亡くなり、お通夜の席で王貞治が別れの言葉を述べる様子が報道された。“巨人、大鵬、卵焼き”の真っ只中に小学生時代を過ごした私などは、号泣するよか術がない状況だ。

<タカアンドトシ的に>“おまえは星飛雄馬か”と頭をはたかれそうだが、そう言われるとさらに嬉しくなるお目出たい世代なのである。<綾小路きみまろ的に>“あ~、あれから40余年”星飛雄馬は変わらずとも世の中はすっかり変わってしまった。

ここからは憶測だが、ちゃぶ台をひっくり返して息子に暴力を振るう父の一徹は、とっくに逮捕されて刑務所暮らし。次に、親友と言いながらも*重いコンダラを牽かせ、竹刀で俺をシゴきまくっていた伴宙太も、暴行罪で逮捕された。そして、中学生のくせに平気で車を乗り回し、最近では車で建物を破壊しまくっている花形満は、道交法違反と器物破損罪で刑に服している・・・かも知れない。

image021

<星飛雄馬的に>“父ちゃん、俺は今モーレツに怒っているぜ。みんな捕まっちまったじゃないか”と本人も嘆いているに違いない。<わたし的には>“あの時代に戻りたいな~” そんな訳で次号では「巨人の星に学ぶ指導と体罰とのボーダー」を載せる予定です。    (Sakai)

*重いコンダラとは、図のような地均しローラーのことで、巨人の星の主題歌冒頭にある「思い込んだら・・・♪」の部分を「重いコンダラ・・・♪」と視聴者が勘違いしたことが由来。当時は整地とシゴキが同時にできる一石二鳥の道具であった。)